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出逢い
「こんにちはー」
桜並木を通り過ぎ、それから更に2・3角を曲がって住宅街に入る。その一角に、友姫ちゃんの通う幼稚園がある。
私は、何とか迷わず来れた事にほっと胸を撫で下ろし、門から中に入ると、近くにいた先生が私に気付き、笑顔で近付いて来る。
「こんにちは。…えっと、どのこのお迎えの方ですかね?」
初めて見る私の顔に、少し困惑気味だ。
「あの、私、姉の飯塚佳椰(いいづか・かや)の代理で来ました結城(ゆうき)…」
そこまで言うと、ああ!と何か思い出したように頷き、
「飯塚さんから伺ってますよ。友姫ちゃんのお迎えですね?なら瑛(あきら)先生のところですよ。瑛先生ー!友姫ちゃーん!」
私を姉の代理だとわかると、後ろに向かって大きな声で叫ぶ。すると、砂場で遊んでいた女の子と男の人が立ち上がり、振り向く。
「あー、あやおねーちゃん!!」
私を見つけるなり、物凄い勢いで走ってくる。どうやら、忘れられていなかったようだ。
けれど怪我でもしたら大変と思い、危ないから、と声を掛けようとするとその後ろから
「友姫ちゃん、危ないから走っちゃダメたよー!」
と叫ぶ声。友姫ちゃんと一緒にいた男の人、あの人が〈瑛先生〉?なんだかまだ若そうだ。
自分もそんなに歳ではないが、何だか年寄りくさい事を思ってしまった。
「あやおねーちゃん!」
「友姫ちゃん、久しぶりだね。いいこにしてた?」
息をきらして走って来た友姫ちゃんの頭を撫でる。
「うん!ゆき、いっつもいいこにしてるよ!」
にこにこしながらそう答える友姫ちゃんはほんとに可愛い。そう思える事に、どこかほっとしている自分を感じた。
「友姫、ちゃんは、ほん、とうに、いつ、もいいこ、に、してます、よっ」
言い終えると、膝に手をつき、はぁーと息をつく。
「あの、大丈夫ですか…?」
友姫ちゃんの後を追って走って来た〈瑛先生〉は、肩を大きく上下させ、本当にしんどそうだ。何だか心配になり、思わず声を掛ける。
「ははっ大丈夫ですよ。こんなのはいつもの事ですから」
そう言いつつも、あまり大丈夫そうには見えない。
「あきらせんせいは、たいりょくないから!」
「…言われてますよ?」
「いやー、情けない話です。子どもの体力には敵いません」
そう言って笑う先生の顔は、何だかとても優しくて、私まで笑顔になってしまう。
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