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ドゥランテという少年はとても人懐こく、ころころと笑ってあっさりとベアトリーチェと打ち解けた。
彼が現れて数時間、灰被りの新しく煎れた紅茶を飲みながら三人は談笑している。
話題が戻ってくる様子はない。
ベアトリーチェも慣れない子供の相手に珍しくいっぱいいっぱいのようであった。
少年は伸ばした黒髪はそのままに、後ろは尻尾の様に纏めている。
細かな装飾が施された大きめのブラウスを違和感なく着こなし、何故かサイズの合わなさそうな安全靴を履いている。
東洋人の顔立ちに見えた。
ドゥランテはここ暫く灰被りの元に身を寄せているのだと告げた。
「ドゥランテは…人間じゃないのか?」
ベアトリーチェは疑問を口にする。
灰被りと人間の交流についてはあまり聞いたことがなかったのだ。
少年の茫洋とした魔力の気配では彼がエルフであるという可能性も考えられたが、黒髪のエルフなんて前例を見ないものだ。
少なく共生まれながらに莫大な魔力に祝福されている龍や陰<おに>ではない、そうベアトリーチェは踏んでいた。
「僕は人間だよ」
「ドゥランテ――――」
「いいから、灰被り」
灰被りは先程からあまり口を開こうとしない。
諌めるような声色で少年の名を呼んだが、結局妙に余裕気なドゥランテに制されて再び口を閉ざした。
彼女は一体何を憂慮しているのであろう。
青年が不思議そうに目をやると<魔女>はばつの悪そうに頭を垂れた。
……様子が可笑しい。
「どうしたんだ、灰被り。先程からそわそわして……」
「……ベア、その子は、」
「灰被り」
またも灰被りの声を遮ってドゥランテが割り込んだ。
笑顔であるはずなのに、何故か威圧感を感じて二人はたじろぐ。
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