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けど、私は頭首になんて向いて無い。
私なんかより、幻真兄さんの方が頭首に向いてると思うんだよね。
分家の長男だけど異能は強いし、頭も良い。
何よりやる気がある。
「私みたいに要領が良いだけの人間なんかよりよっぽど頭首に向いてるよね。」
人の上に立つ器だよ。
父様はそこら辺もちゃんと見るべきだと思うんだけどなぁ……
でも――
「こんな事、父様に言っても無駄なんだよね……うん、分かってる。結局、私にはどうする事も出来ないんだ。」
私は仰向けになり目を閉じた。
闇に落ちていくような、そんな感覚が私を包んでいく。
音も何も無い世界に、一人佇んでいる姿が思い浮かぶ。
ああ、いっそこの何も無い世界で暮らしたい……
けれど、現実はそれを許してはくれなかった。
「お嬢様。頭主様がお呼びです。」
十蔵の声が部屋に響く。
私は目を開き、嫌々ながらも立ち上がり部屋を出た。
正直、私は父様に会いたく無い。
ハッキリ言って、私は父様が嫌いなのだ。
嫌悪どころか憎悪してしまう程に……
「父様は、自由をくれないもの……」
どうせ今日の用事だって、私の自由を奪う為のものに決まってる。
私をこの家に閉じ込める為に用意したに決まってる。
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