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「フフフ。アハッ、アハハハハハハハハハハ!」
急に笑いが込み上げ、私はお腹を抱えて笑った。
彼はそんな私を困った顔で見ている。
「笑わないで下さい……」
「ハハハハッ、アハハハ…ハァ―――……すみません。何だか可笑しくって……」
私は彼と会ってから変わった……
いや、「戻った」と言うべきかも知れない……
彼に会う以前は、今程、声に感情が篭っていなかった……
「心」が、無かったから……
私は二年前に一度、心を失った。
何で心を失ったのかは覚えていない。
ううん、違う……
覚えていないんじゃ無くて、思い出せ無いんだ。
あの時の記憶は、私に宿る力に奪われ喰われてしまった……
だけど、最近私はその喰われてしまった記憶を、少しずつ取り戻し始めている。
だからこそ分かる……
多分、私は「怖い」んだ。
あの時の記憶を取り戻して、心をまた失うのが、怖い……
そうか、これが「恐怖」なんだ。
怖いという感情。
恐怖する心……
「やっと、一つ…取り戻せた……」
私は小さく呟き、胸を押さえる。
取り戻せたのは暗い感情だったけど、もう二度と、失いたく無かったから……
「どうしたんですか?」
私の様子がいつもと違う事に気付いたのか、誠君が顔を覗き込んできた。
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