回想開始

5/18
前へ
/100ページ
次へ
「なんでもありませんよ。それより、夏休みの宿題を終わらせましょう。」 私はなるべくいつも通りの表情で、淡々と事務的に言葉を紡ぐ。 「まだ数学と国語が残っているでしょう?早くやってしまわないと、後手後手になって結局出来ないままになりますよ?」 「うっ…確かに……」 痛い所を突かれたって感じの顔だなぁ…… 多分身に覚えがあるからなんだろうなぁ。 誠君は、正直分かりやすい。 考えてる事や思ってる事が直ぐに顔に出る。 夏休みの宿題を既に終えていた私は、取り留めの無い思考を張り巡らせていた。 そして、気が付けばいつも誠君の事を見ていた。 何故だろう? 私は、どうして彼の事がこんなに気になってるんだろう? 考えても、答えは出ない。 でも、今はまだ、それで良い気もする…… もう少しの間は、このままで居たい。 そう思った。 どうせ…どうせ彼の依頼が終われば私は―― 「―――よむさん!希世夢さん!!」 「え?は、はい……!」 そこまで考えて、私は誠君の呼び声で我に帰った。 「どうしたんですか?ボーっとしてましたよ?」 「あ、ちょっと…考え事を……」 「珍しいですね。呼んでも気付かないくらい考え込むなんて。」
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加