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「なんでもありませんよ。それより、夏休みの宿題を終わらせましょう。」
私はなるべくいつも通りの表情で、淡々と事務的に言葉を紡ぐ。
「まだ数学と国語が残っているでしょう?早くやってしまわないと、後手後手になって結局出来ないままになりますよ?」
「うっ…確かに……」
痛い所を突かれたって感じの顔だなぁ……
多分身に覚えがあるからなんだろうなぁ。
誠君は、正直分かりやすい。
考えてる事や思ってる事が直ぐに顔に出る。
夏休みの宿題を既に終えていた私は、取り留めの無い思考を張り巡らせていた。
そして、気が付けばいつも誠君の事を見ていた。
何故だろう?
私は、どうして彼の事がこんなに気になってるんだろう?
考えても、答えは出ない。
でも、今はまだ、それで良い気もする……
もう少しの間は、このままで居たい。
そう思った。
どうせ…どうせ彼の依頼が終われば私は――
「―――よむさん!希世夢さん!!」
「え?は、はい……!」
そこまで考えて、私は誠君の呼び声で我に帰った。
「どうしたんですか?ボーっとしてましたよ?」
「あ、ちょっと…考え事を……」
「珍しいですね。呼んでも気付かないくらい考え込むなんて。」
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