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彼は若干心配そうな顔で私を見詰める。
「疲れてるんじゃ無いですか?ここのところずっと僕の勉強見ては、夜遅くまでパソコンで依頼のチェックしてるみたいでしたし……」
って言っても、8時半くらいですけど……
「気付いてたんですか?」
「まあ…トイレ行こうとした時、キーボードの音が聞こえてましたから、そうかなって思ったんです。希世夢さんがどれだけ「心」を取り戻したいと思っているかは解らないし解れませんけど…あんまり無理しないで下さいね……?」
「大丈夫です。無理はしてませんよ。というより出来ないことくらい知ってるでしょう?私は9時には寝ちゃうんですから。それより!また手が止まってますが……?」
私の指摘に彼は――
「うっ………」
と声を上げ渋々宿題に取り掛かる。
「人の心配する前に自分の事をやって下さいね?」
「はい…すいません……」
力の無い彼の返答に、私はくすりと小さく笑った。
こんな平和がずっと続いて欲しい……
最近、暇さえあればそんな事を考えている自分が居る事に気が付いた。
無理だと知っているのに……
彼の依頼が終われば、彼の異能が目覚めぬように、彼を含めたこの町の人間全ての記憶を改竄し、私が存在した痕跡を全て消すのだから。
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