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「はい……」
「ふふふ。」
私の言葉にしょんぼりとする誠君の姿が何だか可愛く思えて、思わず笑ってしまった。
ああ、誠君ともっと一緒に居られたらどれだけ良いだろう。
こんな会話を続けていたい。
でも、私はそれが叶わないと知っている。
叶えられないと知っている。
けど――
けどもし私が、普通の家に生まれていたら、それも叶っただろうか?
彼の横でこうしてずっと笑って居られただろうか?
んーん……
きっと、私は彼と出会う事すら出来なかった。
多分彼とは違う人と出会って、喧嘩したり仲直りしながら暮らしたんだろうな……
でももし、今とは違う出会い方をしてたら?
私が心を失っていなかったら?
もっと、近付けたかな?
あの時、あんな事を考え無かったら、私は誠君の隣にこれから先もずっと居れたのかな?
◆ ◆
あの日も、雨の酷い日だった。
6月も半ばを過ぎた頃、私は家の自室で小説を読んでいた。
私の家は、平安時代から続く陰陽師の家系。
言霊と呼ばれる特別な力を使う異能者だ。
そして、私はその家の次期頭首として育てられた。
頭首と言えば、普通男性が成るイメージがあるが、私の家では異能が強い者を頭首として選ぶ。
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