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「竜姫さん、貴女ももう観念すべきです。もう、貴女には止められない。」
私は彼女が伸ばした手を掴んだ。
しっかりと、掴んだ音が聞こえる程勢いよく。
そして感じた。
彼女の中に息づく「私」の鼓動を。
それは掴んだ彼女の手から、徐々に、そして急速に私の中へと流れ込んで来る。
私は目を瞑りその感覚を追い掛けた。
欠けていたピースが次々と埋まり満たされて行くのが分かった。
どんどんと、自分の中にこれまで失われていたモノが造られ組上がっていく。
ああ……
これが「私」なんだ……
お帰り、「私」。
最後のピースが、嵌まった音が聞こえた。
私は、ゆっくりと目を開ける。
そこには、元の姿に戻り、放心している竜姫さんの姿があった。
「依頼は、破棄させて頂きます。」
私はそう言って部屋を出ていく。
竜姫さんは、何も言わなかった。
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