骸骨の瞼

少女の瞼

　
　ある冬の早朝、少女は目を覚ました。

　目の前で骸骨が踊っていた。自分しかいない病室で、泥に塗れた骨が愉快に踊っていた。

　その骸骨には、右腕がなかった。左手を首に突っ込んでいるが、少女は首を傾げる。

　少女は瞼を閉じて、骸骨の踊りを見続けた。

　少女と骸骨のいる病院の外では、雪が積もっていた。虚しい程の銀世界である。数多の日射が、積雪を愛おしそうに撫でていた。

　空から降る雪は、まるで白い花びらのようだった。冬にも、花は咲くのである。

　山奥では、川は凍った上から雪を被っており、一目では枯葉の上と見分けがつかない。
　一面真っ白で、黒い場所など全く見当たらなかった。

　冬は、闇を知らない。全てが白く輝き、芽生える、素敵な季節である。

　天から降り続ける花達は、がさついた歌声を聞いた。微笑み、踊り始める。

　雪は舞った。陽射しに照らされ、光に愛されながら踊り続けた。

　雪は、美しかった。
　その雪の下には、骸骨が殺した猪の血肉がある筈である。