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――それから十年後の春、俺はあの約束の地に赴いた。
するとそこには、あの白い女性が待っていた。
「待っていたぞ、小僧」
「本当に待ってたんだな、アンタ……」
「さぁ、お前の力で妾を解放しておくれ……。その桜に触れてみろ……」
俺は言われるが儘に、桜の木に触れた。
刹那、眩い光が桜の木から放たれ、俺は反射的に目を瞑った。
目を開けるとそこには、あの女性が嬉しそうに立っていた。
――しかも頭に角を生やして。
「……何で、成仏しない。つか、何で角生えた!?」
俺のツッコミに反応した女性は顔色を変え近づいてくると、嫌みったらしくこう告げた。
「成仏? 馬鹿を言うな。妾は此の桜に封じられた鬼姫だ。お前の先祖によって封じられたのさ。……さて、この恨みを晴らす為に、お前には妾の下僕になって貰おうかのぅ」
「んだとぉぉっ!? なんで自由にしてやった俺がお前の下僕になんなきゃなんねぇんだよ!!」
「黙れ、小僧。恨むならお前の先祖を恨め」
そう言って着物の裾から扇子を取り出し、鬼姫は甲高い笑いをあげた。
そんな彼女を見て俺は、自分と先祖をとことん恨んだ。
こうして俺の運命は『非』日常へと投げ入れられたのだった――
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