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深夜も一時を回り、沈黙と暗闇が世界を覆い尽くす頃。
陽気な電子音によって、男は深い深い眠りから目覚めた。
「……仕事か」
重たい瞼を無理矢理見開き、携帯を開く。
液晶の光が嫌に眩しくて瞼を閉じたくなるが、そこを何とか堪えて新着メールを確認する。
宛名:魅亜
件名:お仕事だよん♪
内容:市街地より北西に二キロ離れたビルにて、感染者を発見したよー!
早く現場に来てねっ☆(≧ε≦)/
少しの間を置いてから携帯を閉じ、上体を起こす。
そして漆黒のコートを羽織り、銃剣を肩に掛けると、すぐさま外へと飛び出して行った。
現場に辿り着くと、少し癖のある真紅の髪に、朱色のコートを羽織った小柄な少女が男の到着を待っていた。
「黒斗遅いよぉ! 早くしないと感染者が――」
「……分かってるさ、魅亜。 つか、仕事絡みのメールに顔文字使うなよ、気持ち悪い」
魅亜の言葉を遮って、黒斗が毒を吐く。
その言葉に魅亜はぷりぷりと怒ったが、黒斗はそれを軽くあしらった。
「――さて、今日も始めようか」
黒斗は銃剣に手を掛け、現場となっているビルを見上げる。
ビルの高さは四階建てくらいで、外壁は棘付きの太い蔓に覆われ、不気味な赤紫色の蕾が所々についており、今にも咲きそうだった。
「今回も手強いタイプに感染してるみたいから、気を付けてね」
「あぁ」
そう言って二人は魔の巣窟へと足を向かわせた。
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