滅びの種

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入口に絡み付いた蔓を切り払い、扉を開ける。 内部も外壁と同じような風景が広がっており、奥には複数の生物らしきものがいた。 良く見てみるとそれは――皮膚が緑色に変色し、手足の先から太い蔓を伸ばした『人間』だった。 「くそ、他にも感染者がいたのか……。 魅亜! 核は何処にある!?」 「んと、最上階の部屋だよ。 一つしか部屋がないみたいだから、すぐ分かるはず」 「なら……一気に行くぞ!」 言い終わると同時に、黒斗は引き金を引く。 発砲音が連続して響き渡り、眼前の化け物の身体を吹き飛ばした。 それを確認する事無く、二人は正面左の階段を駆け上がる。 すると今度は太い蔓が触手のように行く手を阻む。 黒斗はそれを切り払って道を作り、魅亜は呪符を取り出し、後ろから迫り来る化け物を焼き払う。 「さぁて、仕上げといこうか」 最上階に辿り着き、黒斗は扉を開け放つ。 最後の部屋にいたのは、身体中から赤紫の蕾をつけた蔓を伸ばし、ビルに寄生するように壁に張り付いた女性だった。 女性の周りには干からびた人間が四、五人転がっている。 「――核となる感染者を確認。 これより駆除に入る」 黒斗が銃剣を構えると、魅亜は呪符で女性の盾となる蔓を焼き払う。 黒斗は蔓が再生する前に一気に駆け寄り、女性の身体を切り裂いた。 深紅に輝く血が勢い良く吹き出すと、女性の肉体は一気に石化し、ひび割れる。 最終的には灰と化し、桜吹雪のように宙を舞った。 「駆除完了。 被害規模レベルE、その他感染者も駆除――お疲れ様、黒斗」 「あぁ」 「――また、思い出してたの?」 魅亜は黒斗の表情が曇っているのに気付き、心配そうに聞く。 「……あぁ」 「神様も酷いよね……。 『滅びの種』――疫病による人間の駆逐、かぁ……。 私達、生き残れるかな」 「生き残るさ。 こんな理不尽な死、俺はごめんだ」 そう言って黒斗は踵を返す。 魅亜は焼け跡を見、そして黒斗の後を追った。 西暦2063年、人類は神によって滅ぼされる運命を歩み始めていた――
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