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「もしもぉし、起きて下さいよぉ~」
幼く、可愛らしい声が私を呼び起こす。その声で意識が戻り、うっすらと瞼を開くと、幼い顔立ちの少女が微笑みながら平手打ちを構えていた。
「――!?」
私は平手打ちを避ける為、飛び起きて後ずさりする。すると少女は笑みを崩し、むすっと頬を膨らませた。
「あ~、やっと起きたぁ! 起きるの遅いですよぉ~。 ささっ、早くツアーを始めましょっ♪」
再び笑みを浮かべると、状況を把握出来ていない私の手を掴み、引きずり出した。痛い、と叫んでも、彼女はお構い無しに私を引きずる。
「皆さんお待たせいたしましたぁ♪ それではツアーを始めまぁす♪」
彼女が立ち止まった先には七、八人の人間がおり、老若男女を問わない小さな群は、不安そうに少女を見ている。
そう言えば、此処は何処なんだろう。
薄暗い洞窟のような空間。しかし、肌寒さは感じず、逆に蒸し暑さを感じる。気付けば汗をかいていた。
「なぁ……、此処は何処なんだ?」
「ここは地獄、ですよぉ♪ あっ、自己紹介が遅れましたぁ。 私は死神のリリスと申しますぅ♪ これから皆さんには、地獄見学ツアーをしてもらいまぁす♪」
真紅のツインテールと顔に似合わない大きな胸を揺らし、楽しげに彼女は言う。一瞬、ロリ巨乳とは彼女の事を指すのだろう、と思ってしまった。
それより――地獄見学ツアーとは一体何なんだ?
リリスは群を誘導しながら、闇の中へと進んで行く。未だに状況が理解出来ない私も、取り敢えず着いて行くことにした。
出口らしき場所を抜けると、そこは赤紫に染められた岩々に囲まれた不気味な場所だった。所々で金切り声やら叫び声が聞こえる。
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