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「此処は生前罪を犯した人間の魂が、その罪に応じた罰を受ける処罰所ですぅ♪ ここに来る前にまず、閻魔様から生前の行いを見て貰い、天国か地獄行きかを決めて貰うんですぅ」
リリスは出口から伸びる緩やかな坂を下りながら説明する。絶える事無く続く叫び声に、涙する者や怯える者が増えていくが、彼女は気にも留めず歩き続ける。
坂の下には古びた看板が立っており、四つに枝分かれした道の先を示していた。
「そして、地獄行きが確定した者はこちらに連行され、輪廻転生の時まで罰を受けて貰うんですぅ。 鞭打ちに熱湯、針山散歩……。 どれもよだれものの罰ですぅ……」
リリスは罰の内容を口にした途端、身悶え喘ぎ出す。どうやら彼女にはそういう性癖があるようだ。
そうこうしているうちに、赤い水溜まりがちらほらと現れ始めた。
「は~い、こちらは地獄の番犬、ケルベロスたんの遊び場ですぅ♪ ここでは、輪廻転生の価値がない魂達がケルベロスたんの餌になる場所で、赤い水溜まりは彼等の血なんですよぉ」
血……?
肉体の無い魂にも『血』が出るのだろうか?
そんな疑問が過ぎるが、眼前に現れた化け物のせいでそれは吹き飛んでしまった。それは――漆黒の体躯に三つの頭を持つ犬だった。
それを見たリリスは駆け寄って抱き付き、小さな群では泣き叫ぶ者や怖じ気づき尻餅をつく者が目についた。
「や~ん、ケルベロスたぁん♪ 今日も可愛いですぅ♪」
リリスは頬擦りしながらケルベロスを愛でる。ケルベロスの身体は彼女の三倍の大きさで、顔ではなく前脚に頬擦りしている。ケルベロスもリリスに懐いているのか、嬉しそうに巨大な尻尾を振っている。
スキンシップを終えると、リリスは次の場所へと私達を誘導する。こんな調子でリリスは針山や茨の鞭による鞭打ち、灼熱の炎で焼かれる風景等を案内して行った。
そこで私はふと、ある事に気が付く。
――人間の数が減っている――
始めは私を含めて八人程いたのに、今は六人に減っている。私は、嫌な予感に背筋を凍らせた。
「さぁさ、本日のツアーも次で最後ですぅ♪ 皆さん相当怖がってますねぇ♪」
リリスはニコニコと笑いながら私達を見た。
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