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AM8:00
どうやら時差ボケも治ってきたようだ、環境に適応する能力が意外と高い事に自分でも驚いた。
荷物をまとめてフロントまで移動する。
そこに彼女の姿は無かった。
「おはようございます」
『おはよう、チェックアウトしたいんだけど』
「かしこまりました」
『今日はリヒテンシュタインまで行こうと思うんだ』
「それでしたら一度街中まで出て高速バスに乗るといいかと思います、今からですとまだ間に合いますよ」
『ありがとう、じゃあタクシーを呼んでもらえる?』
「かしこまりました」
僕は早々に清算を済ませてタクシーに乗り込んだ。
タクシーは昨夜自分が迷ったと思われる道を走る。
「gjptag@jm」
運転手がドイツ語で話しかけてきた。
『ごめんなさい、私は英語しかわかりません』
「OK、ほら、パトカーだよ」
フロントガラスの先にパトカーが三台止まっている。
「この辺の警察は怠け者だからな、よっぽどじゃないとあんな人数は動かん。多分…ありゃ殺しだな」
運転手の一言で、僕は嫌な予感を感じとった。
「最近はゼクトとか言うのがやたら激しく活動してるからな」
『ゼクト?』
「異端の宗教だよ、昔は国で認めた宗教と分教とを分ける為の呼び名だったんだが、今では邪教やら何やらをひとまとめでゼクトって呼んでるんだ、なんだか人拐いやら殺しやらが多くてね、薄気味悪いったらありゃしない」
『ゼクト…』
日本で言う新興宗教のような物なんだろう。
「ミスター、着いたよ」
『ありがとう』
「そこの前にあるのがバス停だ」
僕は軽くお辞儀をして運転手にチップを渡した。
運転手は「ありがとう」とドイツ語でお礼をしてその場から離れて行った。
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