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朝、コーヒーの匂いで目が覚めた。
どうやら僕はソファーにもたれかかったまま寝てしまったらしい。
僕の腕に抱かれていたはずの彼女が明るい笑顔でコーヒーとトーストを持ってきた。
「おはよう」
『おはよう…』
「私の顔に何かついてる?」
『いや…』
きっと彼女は辛い自分と戦ってるんだろう。表面的にでも彼女よりも辛そうな顔をしてはならない。そう思って僕は普段と同じように接した。
『いい天気だね』
「えぇ、どこか観光でも行きましょうか?」
『お姉さんの葬儀は?』
「昨日終わったわよ、家族は私しかいなかったから…」
『そうか…』
彼女の言葉は「あなたと同じよ」と言っているように聞こえた。だからこそ僕の所に来たのかもしれない。
「どこに行きましょうか?」
『じゃあ、ノイシュヴァインショタ…ノイシュヴァインシ…』
「ノイシュヴァインシュタインね」
彼女は正しい城の名前をすらすらと言い放つと、小ばかにするように笑った。
『こんないい難い名前にした奴が悪い』
僕も精一杯彼女に笑いかけた
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