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《我が身に宿りし青龍。彼の者の傷を癒せ。》
青龍によって切り裂かれた傷が無くなっていく。
傷が癒えた華月にキリュウはまるで愛しい者に触れるかのように、優しく抱き頬を撫でた。
「お前は私をキリュウとして接し心配してくれるのだね。」
今までキリュウをただの鬼として接してくれた者はいない。
此処へ来る前は皆から一線を引かれ、東の領土で青龍になると鬼達はキリュウを青龍として扱い、女性達はキリュウの外見だけを見て惹かれていく。
ただ1人華月を除いて……。
初めてだった。
自分を1人の鬼【キリュウ】として扱い接してくれる存在がいることに…。
―華月は優しく芯の強い無垢な娘…。
それに比べ自分は穢れた罪深い鬼…。
外見は綺麗でも中身は醜い。―
「だからこそ薄汚れた自分にはない光輝く娘に惹かれるのか……。」
キリュウは熱い視線で華月を見ながら優しく唇に己の唇を寄せるが、彼女の無垢な寝顔にふと止まり
「穢れた私には相応しくない。だが…」
―それでもお前に…。―
キリュウはまるで初めて恋をしたかのように、華月の額に己の唇を一瞬だけ口付けた。
この行為を1人の鬼が隠れて見ていたとは華月は勿論キリュウも知らない……。
~その参終わり~
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