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自転車を漕ぐ俺の耳に聞きなれた着信音が飛びこむ。
「先にゲーセン行ってるわ」
なんでコータは絵文字を付けないんだろ。
俺は自転車を片手で運転しながら、携帯をいじる。
「はいはい!」
そう送った瞬間、目の中に見覚えのある旗と看板が飛び込んできた。
【カカオパルプ】
……わりぃコータ。アッキータイム突入だわ。
コータへの罪悪感と、未知への好奇心を混じらせながら怪しげな旗達の前に自転車を止めた。
旗の群れを抜けると、木で出来た古ぼけた扉が現れる。
なんか、ジブリの映画とかに出ててもおかしくなさそうだ。
ギィーという重厚な音と共に店内に入ると、表の胡散臭さとは一変した世界が広がっていた。
暗い色の木で出来た家具たちが目に飛び込む。
カウンター席が基本なのだろうか。他はテーブル席が2、3席あるだけのこじんまりした店内。
アンティークって言うのかな?
古ぼけているのだが、どこか品を漂わせる装飾品達が印象的だった。
何よりも一番印象的だったのが、ショーケースだ。
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