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俺はケーキや総菜が入っているショーケースしか見たことがない。
しかし、この店の場合は様々なチョコレイトが置かれていた。
【ショルチョコレイト】【エンローバーチョコレイト】……
そう、チョコレートだけが置かれたショーケース。
それもすごい量だ。
呪文みたいなチョコレイト達は、俺の目を釘付けにさせる。
「……いらっしゃいませ」
おもちゃ売り場にいる子供のような俺は、その声で我に返った。
声のした方を見ると、カウンターの中に一人の男が立っているのが見える。
低く少し枯れたハスキーな声は、出す人によっては威圧感を与えるようなモノだった。
でも、この人は違った。
低い中に、どっしりとした貫禄のある温かみを感じる。
枯れた声は、少しの奥ゆかしささえ感じる。
白いシャツに、黒いサロン。黒いベストを着用し、まるでカジノのディーラーのようだ。
顔に目を向けると、小奇麗な格好とは反対にチリチリとした縮れ髪。
手入れされた髭がアゴからもみあげにかけて伸びている。
対極にありながら、何故か似合うその姿に見とれてしまった。
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