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「……あ、すんません!!」
ショーケースにベタベタ付けていた指紋を、ジャケットの袖で急いでふき取る。
「気にしなくて良いですよ」
そう言うと、男はこちらをサングラス越しで見つめながらカウンター席に手を差し出していた。
俺は小さく会釈してその席まで向かう。
なんか厳かな気分だ。自分には場違い。
そんな考えが頭をめぐるほど、男は清楚で厳格なオーラを放っていた。
俺は縮こまりながら、四本足の木椅子に座る。
「私は青海(おうみ)と申します。」
男が胸に片手を当て、小さくお辞儀をした。
全てが完璧で、無駄のない行動のように感じる。
「……は、はい! お、俺は…いや、私は斎藤と申します。」
しどろもどろになり、俺は小さいお辞儀を何回もした。
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