<チョコレート>

17/31

16人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「……あ、すんません!!」 ショーケースにベタベタ付けていた指紋を、ジャケットの袖で急いでふき取る。 「気にしなくて良いですよ」 そう言うと、男はこちらをサングラス越しで見つめながらカウンター席に手を差し出していた。 俺は小さく会釈してその席まで向かう。 なんか厳かな気分だ。自分には場違い。 そんな考えが頭をめぐるほど、男は清楚で厳格なオーラを放っていた。 俺は縮こまりながら、四本足の木椅子に座る。 「私は青海(おうみ)と申します。」 男が胸に片手を当て、小さくお辞儀をした。 全てが完璧で、無駄のない行動のように感じる。 「……は、はい! お、俺は…いや、私は斎藤と申します。」 しどろもどろになり、俺は小さいお辞儀を何回もした。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加