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テーブル席には、高級そうな花瓶に花が活けられていた。
カウンターの対面壁には大きな窓がいくつも連なり、陽光が暗い世界に光を与える。
タンスとは呼びづらいアンティーク調のチェストの上には、様々な小物が置かれているのが見える。
まぁ、なんと呼ぶのが正しいのかわからないくらい、俺には程遠い世界だ。
チェストの上には、何に使うのかわからないような形の物ばかりならんでいる。
古くからの歴史を刻む色褪せた雑貨達に目を奪われていると、突如背後から音がした。
……チリンチリン
後ろを振り向き、入口に目をやると一人の女の子が立っていた。
その子は、おどおどとしながらも周りを見渡しながら店内に入ってくる。
一歩ずつ足を進めるその顔は、笑みへと変わっていく。
この店の雰囲気が気に入ったのだろうか?
制服のスカートをヒラヒラとさせながら、キラキラした眼で店内を物色しているようだった。
「……いらっしゃいませ」
ショーケースの前にいた青海さんが声をかける。
突然声をかけられ、おどおどしながらも一礼をする女の子。
カウンターに差し出された青海さんの手を見て、女の子は店の奥へと足を進める。
青海さんが指した席は一番奥のカウンター席。
当然、その子は俺の横を通り席へと向かう。
俺は目を合わせずに、カウンターの中を凝視していた。
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