<チョコレート>

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……コツコツ 俺の周りに心地よい匂いが充満する。 なんと表現すれば良いんだろう? シャンプーの匂い。服の柔軟剤の匂い。その人自身の匂い。 そう、言うなれば【女の子の香り】かな。 男では持つことの出来ない、繊細で、柔らかくて、温かい香り。 その子はそんな【女の子の香り】を持っていた。 奥の席に向かった女の子は、そわそわとしながら席に座った。 肩につかないぐらいの黒髪は、窓からの光を受け天使の輪を作っている。 まだちゃんと手入れをしていない眉毛は、女の子にしては少し太めだったが愛くるしく感じた。 ワイシャツに、グレーのカーディガン。どこの学校だろうか? 俺は無意識に横目でチラチラと彼女を見てしまっていた。 何故か真っ直ぐに見ることが出来なかったんだ。 テレビやマンガでよく耳にしたが、なんとなく理解出来なかった言葉が俺の心に浮かぶ。 ……俺は初めて【一目惚れ】というものをしたんだ。
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