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「俺がそう返すくらい読めるべ?」
「……まぁね」
そう言いながら、俺はベッドの横のテーブルの上に手を伸ばす。
テーブルの上には、お菓子のゴミやら、携帯、灰皿が乱雑に置かれている。
それらの中ををガサガサと探り、チョコレートを取った。
「ホント、明はチョコ好きだな」
コータが横目で見ながらつぶやく。それに返すことなく俺はチョコを食べた。
チョコはほろ苦い。
なんだろう。これを食べているといろいろ思うことがあるんだ。
良かったこと。楽しかったこと。笑ったこと。
そして、嫌なこと。辛かったこと。
あいつのこと…
「……ホント、大好きだよな」
聞こえたのか、それとも聞こえないフリをしているのか、コータは何も返さない。
二人の間には沈黙が流れる。いつもの心地よい、お互いが楽な体制の沈黙ではない。
初めて二人きりになったカップルのような……
お互いが、発する言葉を悩み、選んでいるような……
そんな沈黙な中にチョコを食べる音だけが響く。
パキ…パキ…
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