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学校に着いたのは、結局定められた時間の3分前。
俺は駐輪場に自転車を置いて、すぐに昇降口の隣にある掲示板のもとに向かった。
掲示板の前には数人の学生達。俺と同じ種族のルーズな奴らであろう。
そんな「人生妥協組」の中に、見覚えのある顔を見つける。
「…遅い!! 人生何事も10分前行動だ!!」
「人生慎重組」のコータが無粋な顔で立ち尽くしていた。
「わりぃわりぃ! 桜の化身にナンパされちゃってさ!」
すでに言い訳になっていない言い訳に、コータは更に顔を曇らせる。
「……はぁ、またアッキータイムかよ。何分待ったと思ってんの? 後で、ジュースな!」
「へぇへぇ!」
いつもの流れ。俺が遅刻して、コータが怒る。
あまりに遅刻するため、コータは俺の出発するまでの準備時間をアッキータイム(AT)と呼ぶようになったぐらいだ。
「で、俺何組?」
「四組。で、俺は三組。」
俺は掲示板の張り紙に目を向ける。
…………あった。「No 8, 斎藤 明」
「あぁ~あ! 俺とコータの12年間の赤い糸も、ついに千切れちゃったかぁ」
俺とコータは幼稚園からずっと一緒だ。クラスだって一度も別れたことがなかった。
「くだらねぇこと言ってないで、教室行くぞ! 初日から遅刻とか有り得ないから!!」
俺を置いて小走りで駆けていくコータ。
「待ってよハニー!!」
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