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見たことない世界の話を語り続けるあの琵琶法師は
いっこうに自分の話はせんね
「玉手箱を叩いて愛が霞んでしまうみたいな
不安が後から押し寄せるのだ
歌である主人は言ったのさ
叩く合図に問題があるでしょうに」
見えない指で馴染んだ琵琶を弾くあの語り手は
馴染みの客を一切取らないね
「これ以上深く入り込めば舌さえ切られるか
熱く想うほどあちらに迷惑か
目の前である主人が呟いたのさ
切る鋏隠せない脳なしが」
見えない目の奥の奥の
そうだ今だそれを掴みとれ
今だ獲られない光の代償にはちとキツイ
琵琶の響く音
金の置く音
自らの語り
ほらまたあの琵琶法師
あぁして時々じっと身を潜めるでしょう
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