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第一節:ド本命系ボンボン
どうせ会う気なんかないんでしょ?
思わせぶりな態度、止めてくんないかな?
ムカつくから・・
久し振りに声が聞けて嬉しかった電話を切った後のあたしの心境。
「また電話します」
「また会おう」
「またね」
またまたまたまた・・・。
一体何度聞けばいいんだろう。
あたし・・
聡子。31歳。人妻。子持ちの旦那持ち。
厄年。元ヤン。そんなことはどうでもいい。
とにかく何で
あいつ・・
「年寄り」(敏夫・・29歳。独身。年の割りに妙にジジ臭いのでこのあだ名がついた)にいちいちムカつくまたはいらつかなけりゃいけないんだろう。
まあ、いっか。そのうち、連絡あるさ・・・。
敏夫・・通称「年寄り」が遠くの土地に転勤になってかれこれ一年が経過した。
転勤が決まったときはつい淋しくて年寄りを困らせてしまったが、いまは大分落ち着いて「また」にも耐性がついてきたように思える。
そう考えるとあいつのお陰で、と思う反面またムカついている自分が半ば腹立たしく思える。
くそう。やっぱりアイツのほうが確かに「年寄り」だよ。
他の同年代の若造の台詞は鼻で蹴散らせるほどの勢いなのだが、どうも
あいつだけは違った空気を持っていて、どうしても
「ジジィ並みの説得力」
にやられてしまうのだ。苦手なタイプ、だ。
ナンパもさぞかしお盛んなことで・・・
「いえいえそんなこと、日常茶飯事ですから(密かに勝利のVサイン)」
ああ、嫌だ。ヤだ。
こうやって妄想に囚われる自分がひどく嫌だ。元々妄想癖が激しい方だが、かなりのエネルギーを消費してしまうし、現にはたからみればあまり係わりを持ちたくない人物だろう。ここで深くうなづいた奴、余計なお世話だ。
あたしのただでさえ超変人的な妄想癖に更に拍車がかかったのは、なんとなくあいつの「声」によるところかもしれない。
いや、多分そうに違いない。
………。
あのムカつく「低音」を聴いていると…
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