いつか誰かを愛した時 後編

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無事に帰ってきたというのにあの日から悟空の体調は悪くなる一方だった。 腹が減ったと飯を食べてもすぐに戻してしまってどうにもならない。 日に日にぐったりと弱っていくのを見ながらもまだ原因がはっきりしないためにどうすることもできなかった。 悟空が攫われていた間に何があったのかが判れば何か対応できるかもしれない。 でも今の彼にそれを思い出して言うだけの気力があるとは到底思えなかった。 三蔵はベッドサイドの椅子に座ってじっと悟空を見下ろしていた。 彼は今ようやく寝息を立て始めたところだ。 ここ何日か彼は傍を離れようとすると不安そうな顔をして力の入らない手で法衣の裾を握ろうとする。 今にも泣きだしてしまいそうなその表情に毎回負けてその場にとどまってしまうのだがこの場合は仕方ないだろうというしかない。 一番不安なのは悟空なのだ。
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