いつか誰かを愛した時 後編

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それを見た瞬間、三蔵は悟空のこの体調不良を理解した。 悟空の胸元には呪による痣の模様が浮かび上がっていたのだ。 攫われた間に何者かによって呪をかけられていたための体調不良だったのだ。 恐らく本人の意識のない間にかけられたのだろう。 その何者かの目的は悟空に呪をかけることであり、その目的が達成された後は逃がすなり悟空が自ら逃げるように仕向けるなりしたのかもしれない。 そうでなければ今彼がここに居るはずはないのだ。 なおも呪の侵食する苦痛にもがいている悟空を腕に抱きこめると三蔵はそっとその赤く炎症を起こした胸元に触れた。 腕の中で暴れる悟空の耳元で小さく経を唱えると触れた手元がほのかに光を帯びた。 しばらく経を唱え続けるとやがて腕の中の子どもは動かなくなってぐったりと沈み込んだ。 彼の服を整えてからそっとベッドに寝かしつけるともう一度頬を撫ぜた。
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