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「友達に戻った方がいいと思うんやけど」
満開の桜の木の下で、彼はそう言った。
今にも泣き出しそうな顔で、真剣に悩んで悩んだ上で出した答えだと分かる。
正直、予感がないわけではなかった。私たちは、恋人になり切れてなかった。『恋人』というカタチに振り回されていたからだ。
ここで、どれだけすがりついても1度固まった彼の心を動かすのは、桜の花びらが散るのを止めるのと同じくらい難しい。
嫌われたくない、友達でも良いからつながっていたい。その一心から私は笑顔を振り絞った。
「これからもよろしくね」
私たちは握手を交わした。
少しだけ淋しそうで、けど、やっぱり優しい笑顔に、必死に堪えた涙が溢れ出しそうになった。
「ばいばい。またね。」
こうして私たちは、友達に戻った。
彼と別れた瞬間に、涙が溢れだした。ずっとずっととどまることはなく、私の体の中にはこんなにも水分があったのかと思うほど、泣いた。
初めての失恋だった。
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