第一章 必然の出会い

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   月灯りが辺りを照らしているとは言え、それでも薄暗い事に変わりはない真夜中。十階以上はあるかと思われるマンションの屋上に、彼はいた。  だぼついた半袖のTシャツにジーンズというラフな格好をしている彼は、十代中頃と言った所だろうか。  Tシャツの袖から伸びる腕は細く、身長は同じ年頃の子らと比べると、若干低い方に入るだろう。  全体的に、ひょろっこい印象だ。  黒と言うよりダークグレーに近い髪の毛は、顔に沿うようにして顎先まで伸ばされており、好き勝手に毛先がはねている様が何とも野暮ったい。    そして視界をふさぐかの様に伸ばされた長い前髪に、そこから覗く黒縁眼鏡の下半分が、野暮ったさに更に磨きをかけている。  その外見からは大人しそうで自己主張が苦手であろう事が容易に推測でき、いかにも『いじめられっ子』に見えた。    事実、彼はいじめを受けている。      彼の名前は橘 和輝。      彼は今、自殺しようとしていた。  
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