第三章 不協和音

4/29
前へ
/95ページ
次へ
  「ぜんっぜん、よくねぇよ! だいたいお前今夏休みだろ? なのに毎朝毎朝早く起きては俺の安眠妨害しやがって。俺はゆっくり寝てぇんだよ!」  迷惑甚だしいと和輝にそう主張するハルキだが、当の和輝はハルキの怒りもどこ吹く風、相も変わらず掃除機をいじっている。  今にも口笛が聞こえてきそうな素振りだ。  そんな和輝を苦虫を噛み潰したような顔で睨み付けているハルキは、これ以上何を言っても無駄だと悟ったのだろう。  くそっと捨て台詞を残し、ふてぶてしく部屋を出ていった。  和輝がくすくすと笑い、生暖かい目で自分を見送っていた事など、ハルキは知る由もない。     ◇ ◆ ◇   和輝がハルキと出会ったあの夜から、数日がたっていた。  ハルキの言った通り、今は世間の学生達にとっては夏休み。和輝にとっても、高校に入ってから初めての夏休みだ。      普段学校がある時に比べ、家にいる時間の方が多い夏休み。  それにもかかわらず、ハルキがその存在を隠す事なく我が物顔で歩き回れるのには、訳がある。  
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加