第三章 不協和音

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   その訳とは、家庭の事情と言うやつであった。  和輝の両親は和輝がまだ物心付く前に離婚し、和輝にとって親と呼べるのは母親しかいなかった。  そのせいで父親は蒸発しただの言われる事になるのだが、和輝自身あながち間違ってはいないんじゃないかと思う。  女手一つで育ててくれていた母親も、和輝の高校入学と同時に旅行三昧を始め、今では二、三ヶ月に一回帰ってこればいい方だった。  前に手紙をくれた時はヨーロッパ、その前はアフリカ、そして今は“クルーズで行く世界一周旅行”らしい。  置き手紙だけ残して行ってしまった時はあまりの突然さに愕然としたが、反面、和輝はどこか納得している自分に気付く。  
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