第四章 事の発端、癒えぬ傷

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   和輝が住んでいる町に唯一流れる川。それほど大きくはないこの川も、昔は透き通っていてさぞ綺麗だった事だろう。  淀んで濁った今の様子からは想像も出来ないが。  その川に掛かるコンクリートの橋の根元に、和輝は膝を抱えてうずくまっていた。  騒がしい蝉の鳴き声は頭上を通り過ぎる車の音でかき消され、徐々に昇ってきた太陽のぎらぎらとした日差しは、橋が遮ってくれている。  背中に触れているコンクリートのひんやりとした感触が、火照った体に気持ち良かった。 「そんなんだからいじめられる……か」  絶え間なく流れ続ける川を見ながら、和輝は力無く呟いた。  散々泣いたせいか目が腫れぼったく、重く感じる。実際にその目は、赤く充血していた。  
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