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「月の模様って、もちをついた兎なんだって」
と、美沙ちゃんが言った。
「美沙ちゃんよく知ってるね!」
「本当!すごい!」
周りの友達が次々に言っていく。
「久美ちゃんもうさぎに見えるよね?」
美沙ちゃんが私に同意を求めてきたので、曖昧に笑って頷いた。
うさぎ……?
でも、私は……
そこに健斗と大介がやってきた。
「月の模様をアラビアでは吠えているライオン、ドイツでは薪を担ぐ男と言っているんですよ」
と健斗が言った。
そっか、うさぎだけじゃないんだ。
それならきっと。
「あの……人魚に見えない?」
勇気を出して、思ったことを言ってみた。
健斗は眉をひそめて首を振り、周りのみんなも
「久美ちゃんおっかしいんだー」
「変なのー」
とはやし立てる。
言わなきゃよかった。
心が暗く闇に染まっていく。
涙がこぼれないように俯いた。
「俺は面白いと思うけどな」
突然の言葉に顔を上げると、大介の笑顔があった。
「人にできない発想っていいよな」
大介の言葉の光が、私の闇に差し込んだ。
月の明かりのように柔らかな光。
柔らかな明かりに照らされて、私の顔に笑みが浮かんだ。
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