詩人が囁きかける

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「……私」 消え入りそうな、声で。 「アルバイト、辞めますから……迷惑かけて、ごめんなさいっ」 そのまま、振り返って、走り―― 「待って!」 細くて、握りしめたら折れてしまいそうな。 柔らかな、手首の感触。 「っ……」 「ご、ごめんっ」 思わず掴んでしまった手を、離して。 彼女は目を見開いて、手首を覆い隠すように握りながら後ずさる。 「え、と……居なくなると困る、し……その、辞めないでほしい、です」 「……はい。がんばり、ます」 俯いて、走り去っていく後ろ姿。 俯いてしまう、その瞬間に見えた顔は。 嬉しそうにしていたような、そんな気がして。 なぜだかわからないけど、鼓動が小さく跳ねた。
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