道化が戯けるように

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指定された場所には、彼女がいた。 こちらに気づくと俯いて、服の裾を握りしめて。 「あ……の…………」 消え入りそうな声で呟くと、それきり黙り込む彼女。 哄笑を響かせて、幾人かの誰かが現れる。 そういうことか、と驚くふりをしながら思った。 誰かが彼女の肩に手をおいて、携帯の画面を見せびらかす。 そこに映っていたのは、あの時の微笑む彼女と僕。 誰かが何かを言って。 誰かが何かを言った。 彼女はただ、俯いていた。
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