それは、あるいは漠然と

2/17
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
と、まあ音川との初会話があったにしろ、だからといっていきなり喋り出すわけでもない。 俺はまた授業中、渡部の視線を観察するまでだ。 (また見てるし…) ここまで観察し続けると、もう後には戻れなくなる。 俺は昨日に続き、今日も渡部(の視線)を見ていた。 すると― パコッ! 「痛っ…」 何故か頭に衝撃が。 「痛っ…じゃねーよ。授業もまともに聞けねーってか?」 見上げた先には、英語教師が立っていた。 (ヤバ…今授業中だっけ) 「あ…いえ、すみません」 「ったく、あんまり女子ばかり見てねーで、ちったあ俺の話も聞けよ?」 先生は、冗談ぽく笑った。 「…見てませんって」 渡部を見てたのがバレたのだろうか。 俺は静かに、呟いた。 「…?」 ふと視線を感じて目線を上げると、 「……」 音川が、こっちを向いて笑っていた…気がした。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!