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「彼女…」
音川が、俺の言葉を反芻する。
「…ああ」
「聞いてくれるか?」
そして俺は、話し始めた。
あの夏の日のことを―。
「―俺には、悪友がいたんだ。ひなたって言うさ」
「何、ひなたサン?」
話し始めてすぐ、音川に訊かれたので、素直に答えた。
「浅倉(あさくら)ひなただよ。とにかくそいつは中学の入学当初から目立ってた。明るい茶髪にポニーテールで、背が高かったから」
当時を思い出して語る。
俺は今、どんな顔をしているだろうか。
無言の音川が、無表情でこちらを見ている。
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