あの日、偶然が重なって

2/11
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「彼女…」 音川が、俺の言葉を反芻する。 「…ああ」 「聞いてくれるか?」 そして俺は、話し始めた。 あの夏の日のことを―。 「―俺には、悪友がいたんだ。ひなたって言うさ」 「何、ひなたサン?」 話し始めてすぐ、音川に訊かれたので、素直に答えた。 「浅倉(あさくら)ひなただよ。とにかくそいつは中学の入学当初から目立ってた。明るい茶髪にポニーテールで、背が高かったから」 当時を思い出して語る。 俺は今、どんな顔をしているだろうか。 無言の音川が、無表情でこちらを見ている。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!