キスしてほしかったのに、

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放課後の教室。重なり合う男女の影。女の子の背中。立ち竦むわたし。女の子に口付けたままの龍樹の顔。 何秒見つめ合っていたかはわからないけど、いつの間にか走り出していた。 「そんなショックやったん?」 心の中全部見透かされてるような龍樹の鋭い瞳。 そっか、余裕なんやね…わたしなんかよりずっと経験がある龍樹には、誰に見られようがどうでもいいことなんだ…。 なのに逃げ出したりなんかして、バカみたい…。 ショックだった、なんてそんなこと言えない。 溢れ出しそうな涙をグッと我慢する。 泣いたら余計惨めになるだけなのに。 「そんな顔すんなよ」 目を逸らしたら顔ごと正面を向かされた。 それは全然優しいやり方じゃなくて。 強く引っ張られた腕と右の頬に触れる指。 「なに、それとも誘ってんの?」 刺々しい声の後、そのまま鋭い目に射られる。 いつもの龍樹とは違う熱っぽい眼差し。 自分でも分かるほど火照る頬。 すっと顔が近づく。 もう息がかかる距離にまで龍樹の整った顔がある。 .
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