3人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
放課後の教室。重なり合う男女の影。女の子の背中。立ち竦むわたし。女の子に口付けたままの龍樹の顔。
何秒見つめ合っていたかはわからないけど、いつの間にか走り出していた。
「そんなショックやったん?」
心の中全部見透かされてるような龍樹の鋭い瞳。
そっか、余裕なんやね…わたしなんかよりずっと経験がある龍樹には、誰に見られようがどうでもいいことなんだ…。
なのに逃げ出したりなんかして、バカみたい…。
ショックだった、なんてそんなこと言えない。
溢れ出しそうな涙をグッと我慢する。
泣いたら余計惨めになるだけなのに。
「そんな顔すんなよ」
目を逸らしたら顔ごと正面を向かされた。
それは全然優しいやり方じゃなくて。
強く引っ張られた腕と右の頬に触れる指。
「なに、それとも誘ってんの?」
刺々しい声の後、そのまま鋭い目に射られる。
いつもの龍樹とは違う熱っぽい眼差し。
自分でも分かるほど火照る頬。
すっと顔が近づく。
もう息がかかる距離にまで龍樹の整った顔がある。
.
最初のコメントを投稿しよう!