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私が沖田さんと初めて会ったのは、彼の恋人が亡くなった直後だった。
彼女を自分と同じ病で亡くした彼は、当時かなり落ち込んでいた。
そんな様子を見ていた副長の土方さんが、町の植木屋の元に養子に出されていた私に彼の面倒を見るように頼んだのだ。
「大変だろうが頼む。あいつには、お前の力が必要だ」
自尊心の高い土方さんが、私に向かって頭を下げた。
そこまでされたら、やらない訳にはいかない。
「承りました」
私も頭を下げた。
「沖田さん。入ってもよろしいですか・・・?」
局長の近藤さんの別宅で休養している沖田さん。
その元へ、私が来るまで看病していたという女中さんが案内してくれた。
中から、どうぞという声が聞こえてから、女中さんは戸を開けた。
私は、失礼しますと言って中へ入った。
「・・・」
彼は私を見て、言葉を失っていた。
それも当然だろう。
死んだはずの恋人に瓜二つの人間が、目の前に現れたのだから。
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