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「莉緒・・・」
彼は布団の上に上半身を起こした状態で、私を見て驚いた。
「池田文と申します。高幡莉緒は私の双子の姉です。よろしくお願いします」
と言って、私は頭を下げた。
「文・・・さん」
沖田さんは私を見たまま、固まってしまった。
「・・・すみません。あまりに、似ていたもので」
ようやく正気に戻った彼は、私への謝罪の言葉を述べた。
「いえ、よく間違われるので、慣れてますよ」
私は笑顔で、彼に対した。
私と莉緒ちゃんは、両親の死をきっかけに、それぞれ別の家へ養子に出された。池田家と高幡家である。
その後、蛤御門の変で家を焼き出された莉緒ちゃんは、新選組に女中として入った。
そこで沖田さんと出会い、愛を育んだ。
そんな幸せな生活が一変したのは、一年ほど前のこと。
莉緒ちゃんが、病にかかった。
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