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序曲
桜が、今、散る。今、この瞬間に。
私は、学校の裏庭にただ立ち尽くしていた。
何も、考えられない。
そんな私を春風が優しく包んだ。長い黒髪は宙に舞う。その風は、まるで、私の記憶をさらうかのよう。
不意に、零れた、この涙。
一体、誰を思って泣いたんだろう?その質問の答えは、ここに無い気がした。
ここには、何もない気がした。
私が、欲しいものは、何も。
あぁ、まただ。折角蓋をした、この思いが溢れてきた。私は、彼を忘れる事ができない。ここに、置いて行こう。駄目なんだ。もう、ここに私は居ないから。だから、貴方の記憶は忘れよう。ここに、残して行こう。いつか、思い出に変われたら、また掘り起こそう。私は、涙を拭い桜の木の下に一冊のノートを、置いて行った。
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