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「元々、王都に連れて帰った後は、適当な奴にあんたを押しつけるつもりだった。」
「…………。」
「だけど、あんたはかなり使える。」
話しながら、小さくにやりと笑った少年に、ようやく意図が分かってきた。
「俺について来ないか。」
自分が思った通りのことを、少年ははっきりと言った。
自分がどこの誰なのか分からない。
この少年が、どこの誰なのか分からないのもまた同じだ。
一緒に行けば、少年の正体はすぐに分かるだろう。
笑って他者へと斬りかかる少年の残忍さは寒気を覚えることがあった。
年頃の少年にあるはずのない風格に、気迫に、恐怖の念を抱くこともあった。
しかし、それ以上に記憶を失った自分にとって、初めて会ったこの少年は興味が湧いていた。
「お前に……、ついて行かせて欲しい。」
目の前で少年が、にたりと笑みを深くした。
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