不審者と保護者

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徹は息を調え 「いちについて~、よ~い……」 小声で自分にスタートの合図を出す。 「ドンッ!!」 それからの徹の動きは早かった。 前にいたシロを人さらいのように肩に担ぎ、勢いを殺さず駆け出す。 目標であるビニール袋を取れば、あとはビルの隙間を通って道に出るだけ。 それが徹が描いた完璧なる逃走経路。 目標まであと15m。 徹は加速する。 あと10m。 ビニール袋を掴むため右手を構える。 5m。 姿勢を低くし、キャッチに備える。 1m。 徹がビニール袋を見据えた。 50cm。 もはや目と鼻の先であった。
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