第一章

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「今・・・何時や?」 俺の耳に入ってきたのは、多分徳井さんの言葉。 「ふ~く~ちゃぁ~ん」 福田さんは寝ているようで返事はなかった。 「うっ・・・かまってくれるやつがおらんやん」 もう何時間も狭いバスの中で閉じ込められているから、腰は痛いわ、空気は悪いわで、ほとんどの人が眠りについていた。 「ちょ・・・藤森・・・窓あけてぇな」 麒麟の川島さんがそういってきた。相方のポッキー(田村)さんは今日お休みで、先ほどまでグダグダと文句を言っていたが今は体調が悪いようだった。 「はい」 俺はそういってカーテンを開けた。 「あれ?」 「どうした?」 「外が・・・・」 何かをかけられているのか、窓にあるはずの景色がなかった。 「窓も開きませんよ」 「はぁ?なんでや~息ぐるしいわ~。今回の収録女の子おらへんし~」 徳井さんの言う通り。 確かに、珍しい。 それにおかしい。 「閉じ込められたんですかね?」 多分いじって起こそうと試みたのだろうが 「んなあほな、ただの収録やで?なぁ福・・・あれ?・・・」 おい、おい。 と何度も福田さんの体をゆする。 「徳井さん、福田さん寝てるんですから」 「いや、おかしいねん・・・ねてるんやけど・・・こいつ敏感やからゆすっただけでおきるはずなんけど・・・」 確かに、今起きているのは俺と、徳井さんだけらしい。 「あっちゃん?あっちゃん!?」 声をかけても返事はない。 深く寝入っている。 まるで死んでるかのように。 「とっ徳井さん!あっちゃんも・・・」 「やっぱおかしいやろ・・・運転手さん!止めてや!」 そう叫んでも車は速度を緩めることはなく、逆に体がよろめくくらい速度を早める。 「おい!聞こえてんのやろ!?」 ずかずかと運転手の前まで徳井さんが向かう。 「!?なっ」 「どうしたんですか!?」 俺もそういって運転席に向かう。 「な・・・」 運転手は分厚い、漫画でしかみたことのないガスマスクを付けていた。 「なんですか・・・まだ寝てないんですか?」 そういうと俺と徳井さんの顔にスプレーを吹き掛けた。 『なにっ…すんね…』 それだけを言って俺の意識は途切れた。
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