1話

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俺が兄貴を嫌いな理由は、それだけじゃあないんだケドね…         夜中の二時。   俺はアパートを抜け出して外に出る。   金なんてねーから、買い物じゃあない。 煙草を持って歩く。     いつもの公園だ。     煙草を吸いながら空を見てるんだ。 毎日。   このド田舎の町でも、唯一好きなのは、草の匂いと静か過ぎる空。           (お父さーん。)     昔、幼い時に親父とキャッチボールした時の事を思い出すんだ…   キャッチボールが終わると何時も俺に言った。   「キャッチボール、上手くなったじゃないか。」     俺は親父に言われたその言葉が嬉しくてさ。 時間があれば、一人で連絡してたよ。   帰りに親父が買ってくれたジュース。   「皆には内緒だぞ。」   そう言って笑いながら俺の頭を撫でてくれたんだ。     あんな最低な親父でも、何か完全に恨みきれない自分が馬鹿みたいだ。   キャッチボールした時の優しい親父の姿が、今も、俺の心を締め付けるんだ。     一時の情を断ち切れない俺は、完全に親父を恨みきれないでいる。   幼い頃に見た二つのグローブ、真っ白なボール。   親父の笑顔。   記憶を美化して自分を苦しめてる。   馬鹿だよ俺は…
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