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俺が兄貴を嫌いな理由は、それだけじゃあないんだケドね…
夜中の二時。
俺はアパートを抜け出して外に出る。
金なんてねーから、買い物じゃあない。
煙草を持って歩く。
いつもの公園だ。
煙草を吸いながら空を見てるんだ。
毎日。
このド田舎の町でも、唯一好きなのは、草の匂いと静か過ぎる空。
(お父さーん。)
昔、幼い時に親父とキャッチボールした時の事を思い出すんだ…
キャッチボールが終わると何時も俺に言った。
「キャッチボール、上手くなったじゃないか。」
俺は親父に言われたその言葉が嬉しくてさ。
時間があれば、一人で連絡してたよ。
帰りに親父が買ってくれたジュース。
「皆には内緒だぞ。」
そう言って笑いながら俺の頭を撫でてくれたんだ。
あんな最低な親父でも、何か完全に恨みきれない自分が馬鹿みたいだ。
キャッチボールした時の優しい親父の姿が、今も、俺の心を締め付けるんだ。
一時の情を断ち切れない俺は、完全に親父を恨みきれないでいる。
幼い頃に見た二つのグローブ、真っ白なボール。
親父の笑顔。
記憶を美化して自分を苦しめてる。
馬鹿だよ俺は…
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