二 動き始める歯車

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 結衣は目を開いた。目の前に広がるのは、見慣れない天井。鼻の奥に広がるのは、いつもの香り。耳に聞こえるのは、聞き慣れた鳥のさえずり。そして肌に触れるのは、知らないベッドだった。  「…え…」 結衣は体を起こし、まわりを見た。見覚えのない壁、家具、窓。  基本壁などは白で統一されているが、机や本棚などはオレンジやピンクでアクセントを利かせてある。かなり結衣の好みだった。  模様替えするならこんな風にしたいなぁ、と、結衣が寝起きの頭でぼんやり考えていた、その時。部屋の茶色いドアを誰かが開けた。 「結衣~、起きてるのぉ!?」  現れたのは、少し茶髪がかったツインテールの少女。着ている制服は、結衣と同じものだった。  だが今の結衣にとって、そんなことはどうでもよかった。 「……な…」 「?何、どうしたの?」 少女は口をへの字にまげ、不思議そうな顔をした。  結衣に姉妹はいない。この少女にも見覚えはまったくない。
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