一 静止する日常

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 結衣の両親は仲が悪かった。父の浮気や母の浪費癖、結衣の進路についての意見の違い。それらがあるたびに毎日のように喧嘩する。  結衣がものごころついたころには、もう二人の仲は冷めきっていた。成長するにつれ、父が帰ってくると機嫌が悪くなる母を見たくなくて、結衣は自分の部屋に閉じこもるようになった。  結衣は両親が嫌いだった。小学生のころ結衣がいじめにあい、辛くて辛くて仕方なく、助けを求めたのに、母はそんな結衣を突っぱねた。  それだけではない。母はおねしょをした幼い結衣を叱りつけ、一晩中家に入れないことも度々あった。  それでも、生きていくためには両親にこびるしかなかった。家を追い出されれば、きっと生きてはいけないから。  そんな結衣にとって、高校は、友達は、癒しそのものだった。
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