一 静止する日常

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 高校に入ってから出来た友達はいい子ばかりで、話しているのもとても楽しかった。  好きな人だってできた。近くにいるだけでドキドキして、嬉しかった。  彼女たちのおかげで、結衣は初めて人生が楽しいと、充実していると心から思えたのだ。  勉強面も満足していた。  結衣は幼いころから漫画が好きで、その影響か小学校入学してすぐの漢字テストで満点をとった。それを見た母は、喜んでくれた。  それからだ、結衣が成績優秀者でいるための努力を始めたのは。  小学校のころは何もしなくても上位にいれた。中学、高校はテスト前に必死で勉強した。優等生でいるために。  確かに最初は母に喜んでもらいたくて頑張っていた。だが、母はだんだん喜んでくれなくなった。100点満点をとれば確かに喜んでくれたが、90点を下回れば少なからず小言を言うようになったのだ。70点を下回れば、延々と意味のない説教をされた。  いつしか結衣は、『褒められるため』ではなく『怒られないため』に勉強するようになっていた。  それでも構わない、と結衣は思っていた。私は母や父のためにではない、私自身のために勉強しているのだ、と自分に言い聞かせた。
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