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「……永遠って、あると思うか」
いつか問われたその言葉を返してみた。
答えが聞きたいと、強く思った。なんとなくと言うにはあまりに強い衝動。
どこからどこまでが自分なのか、蓉司なのか。その境界線さえ今はもう判らない。
けれどこの肉片だらけの赤黒い部屋に、言葉を交わせる相手はただ一人。
ここには自分たちしかいない。それだけは分かっている。
温度も感覚も、個としての境を失った今は――声が、全てだった。
閉じてしまった瞼はもう開かないだろう。瞼の裏に、抱き合っている相手の面影を浮かべることすら今は難しい。
だからだろうか、よけいに声がほしかった。
落ち着いた、やわらかな声が応じる。
「永遠なんて、あるわけない」
ホッとしていた。
自分でもまさかと思うほどの安堵が、溶け始めた思考に行きわたる。
充足していた。
「……そうだな。そんなもの、あるわけねぇよ」
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